人は大事なことも忘れてしまうから

GK部発足から約2年が流れた。デートをしたり、晴れて付き合ったり、上手くいかなくて別れたり。4人から始まったGK活動も賛同者が次々と表れ、声をかければいくらでもGK参加者は集めることができる。2010年10月現在、彼氏がいて恋愛を楽しんでいる人は一人。この結果を良しとしようか、不甲斐なしとするか。

彼氏が出来た子は、実は身近なところで以前から交流があった人と恋の火蓋を切った。なんでもかなり前から想いがあったようで、「GKやりながらも頭の片隅にその人の存在があった」ということだ。GKに参加する子は、意外と、彼女のように隠しファイルを持っていたりする。

昔の彼、腐れ縁の幼なじみ、遠くから見つめるだけの憧れの人。想いがあるようでないような、進展したいようなそのままでいいような関係のあの人。勢い込んでGKに臨んで、未知なる男性に囲まれたときほど、強く浮かび上がる隠しファイルの君。GKで何も収穫がないときに慰めてくれるのも、そんな隠しファイルの存在なのだ。

隠しファイルを良しとしようか、GKの隠れた敵とするか。ちなみに「隠しファイル」とは「間違って書き換えたり、削除したりしないように、また大事なものを隠すため」にあるとある。大事だから隠すのだよなあ。「見えなくなるので、保存した場所を忘れないように!」ともあって味わい深い。(キューピー小村=GK<合コン>部長)

謝罪の理由

 父方の祖母が今年94歳になる。
 少し体調が悪そうだが、それでも元気に過ごしている。そんな祖母が90歳を越えたあたりから、私を見ると「ごめんね」と謝罪の言葉をかけるようになった。その謝罪の理由は、私に父親がいないのは祖母自身のせいだというのである。
 確かに私は父親がいない。私の「父親」は、私の母親と離婚して、今では新しい家庭をもっている。しかし、その理由がなぜ祖母のせいというのだろうか。祖母とはそれこそ幼い頃からずっと会い続けてきたので、遠い存在ではないし、これまでそんな謝罪は一度も聞いたことがない。まして私にとって「父親がいない」ということは、確かに不都合なことはあったけれど必ずしも不幸なことだけではなく、いないからこその幸せもたくさんあったのである。
 しかし、おばが言う。
 「人間、年をとってくると胸のうちに秘めてたいろんなことがきっと出てくるのよ。その胸のうちは、楽しい思い出というよりむしろ苦しいことや後悔のほうがずっと先だつんじゃないかしら?」
 小学校の帰りに、祖母の家によってお茶と味噌をごちそうになり、テレビを見ながらたわいもない雑談をする。私が覚えているのはそのことなのに、謝罪のほうが先立つのであれば、私はそのほうがずっと苦しい。そして苦しいけれど、聞かなければならないひとつの「理由」である。(J=大学院博士課程)

人生の転機

今、人生において大きな転機を迎えつつある。一人暮らしを始めようというのだ。既に一人暮らしをしている人、経験した人にはハナで笑われるかもしれないが、生まれてこの方(25年間)実家住まいの自分には大きな転機である。

そもそも、なぜ今一人暮らしを始めるのか?というと実は大きな外部要因があるわけではない。勤務地は実家から通勤可能な範囲であるし(若干遠いが)、残業で帰れない、ということもない。その理由は主には内的要因だ。

実際、この年になって親元を離れたことが無い、というのはパラサイトシングル的な恥じらいがある。そして社会人になって、周囲から独り立ちをした方が良い経験ができると聞くようになった。私自身、なんとなく生活に対する甘さがあると思っていたし、丁度良いと感じ、一人暮らしをすることにした。生活に対する厳しさを身につけるのだ。

早速物件探しだ。不動産をくまなく見た。気になる物件は内覧に行った。住みたいと思えるところも出てきた。ところが最近、致命的な問題があることが判明した。私としては手取りの半分くらい家賃でも大丈夫だろうと考えていたが、普通新社会人は30%くらいでないと生活できない、とのことだった。きちんと計算すればわかること。とほほ。

厳しさを身につけるどころか、フィールドに立てていなかった。気を引き締めて、やり直し。独り立ちへの道は険しいぞ…。(taxpon=ITエンジニア)

行く秋や休日名残る白風船


行く秋や休日名残る白風船
休日出勤した。思いの外帰宅が遅くなり、空腹なのに、鞄にガム以外食べ物がないという夜半。キヨスクも閉まっていて、仕方なしに、自販機でコーラを買う。人の少ない車内に、休日の名残の白い風船が、ゆらゆら、風船の下の座席に、茶のジャケットの男が眠る。私は本を読む。仕事が一段落したので、思う存分読めると思うとうれしい。
楽しいことって何だろうって、最近思う。うれしいって何だろう、幸せって何だろう。
前の会社では、残業に次ぐ残業の日々で、いつからか、個人的な楽しみへの欲望が失われていた。週末は、出社しないとしても、ほとんど寝ていた。エネルギーを回復するために、遊びに出かけることもなかった。会社が倒産して、数ヶ月経って、やっとおかしかったと気付いた。
たぶん、当時、仕事も楽しかったのだと思う。でも、やっぱり少し、違ったなと思うのだけれど。今は、そのときのことがあるから、頑張り過ぎない。絵を描くことも、音楽を聴くことも、お酒を一緒に飲むことも、なしにしたくない。
だけど、たまに休日出勤するのも、悪くないかもしれない、と思う。あ〜疲れたなぁと思いながら、腹ペコで、コーラしかなくて、それでもなんだか満足して、本を読む。
私なりにじっくり仕事が出来たことがうれしかった。帰ってきたら原稿送付先から返信が来ていたのもまた、うれしかった。(すなみ・のりこ=出版社勤務)

What is your hobby?

どうも〜なんて入っていって、席について何となく目があった人とにっこり。飲み物を頼んですぐ自己紹介もフライングだから、店の場所が分からなかったとか仕事は近くかなどと雑談し、ハイお待たせしました〜と飲み物が来たので乾杯、順々に自己紹介、そして聞かれる「趣味は?」

出たよ「趣味」の話。私は趣味の話が苦手だ。本当はすごく好きな種類の話でもあるのだが、ネチネチとどこまでも深くしてゆきたいので、自己紹介のついでのように聞かれても困る。でもこの質問をしたくなる事情だって分かるので最近は何とか頑張ってまとめようとする。「読書と木彫りです」

さあ来い。趣味の話をすると、ゴングが鳴ったような気になる。私の大切なものの断片を、君たちは果たして理解できるのかね?もちろんそんな高飛車はおくびにも出さず、木彫りっていっても鮭を咥えた熊ではないし、読書って言っても東野圭吾とかはあまり読みません、と説明する。

きっと趣味の話をするのは、その人が仕事以外にやっていることからその人となりを推し量ろうとしているのであって、GKや面接なんかではやっぱり意味があるように思う。でも以前GKで知り合った人が、こう言ったことがあった。「趣味は?」と聞かれた私が「う〜んう〜ん」とうなっていた所が良かったと。そんな彼に、プラス10点付けるのが乙女心というものだ。(キューピー小村=GK<合コン>部長)