知識の継承 最終回

私が通っていた大学院には、メディアアートの展示会を、企画、作品制作、開催まですべて学生主体でするという授業がある。総合大学の授業としては、珍しいもので、年に夏・冬の2回開催される。本コラムのオーガナイザJ氏ともその授業で知り合った仲だ。

この授業には、「大学院生(1年生)」の「授業」であるがため、メンバーが毎年ほぼすべて変わるといった大きな特性があった。一般的な大学のサークルだったら最低4年は同じメンバーが残っていて、幅広いレンジの学年の人が同じ時間、知識を共有するため、ノウハウは溜まっていくだろう。しかし、この授業ではそのような事はなく、毎年似たような問題、障害にぶつかる。本日、後輩が流していたメーリングリストを読んで、自分が大学院1年生であったころの情景をふと思い出し、不思議な気分になった。

もちろん当時の私は、それを避けるために腐心し、マニュアルを作り継承することを試みた訳だが、それも利用されていない様で少し残念。マニュアルを読んで全て分かる訳ではないし、肌で体感しないと本当に学習した事にはならないけれども。この授業は授業だから仕様がない、というかあえて難しい事をさせる事で勉強させる、という意味ではいいのかもしれない。ともあれ、知識の継承し難さがふっと想起させられた出来事であった。(taxpon=ITエンジニア)(完)