行く秋や休日名残る白風船


行く秋や休日名残る白風船
休日出勤した。思いの外帰宅が遅くなり、空腹なのに、鞄にガム以外食べ物がないという夜半。キヨスクも閉まっていて、仕方なしに、自販機でコーラを買う。人の少ない車内に、休日の名残の白い風船が、ゆらゆら、風船の下の座席に、茶のジャケットの男が眠る。私は本を読む。仕事が一段落したので、思う存分読めると思うとうれしい。
楽しいことって何だろうって、最近思う。うれしいって何だろう、幸せって何だろう。
前の会社では、残業に次ぐ残業の日々で、いつからか、個人的な楽しみへの欲望が失われていた。週末は、出社しないとしても、ほとんど寝ていた。エネルギーを回復するために、遊びに出かけることもなかった。会社が倒産して、数ヶ月経って、やっとおかしかったと気付いた。
たぶん、当時、仕事も楽しかったのだと思う。でも、やっぱり少し、違ったなと思うのだけれど。今は、そのときのことがあるから、頑張り過ぎない。絵を描くことも、音楽を聴くことも、お酒を一緒に飲むことも、なしにしたくない。
だけど、たまに休日出勤するのも、悪くないかもしれない、と思う。あ〜疲れたなぁと思いながら、腹ペコで、コーラしかなくて、それでもなんだか満足して、本を読む。
私なりにじっくり仕事が出来たことがうれしかった。帰ってきたら原稿送付先から返信が来ていたのもまた、うれしかった。(すなみ・のりこ=出版社勤務)