家猫は看取られて逝く十七夜


家猫は看取られて逝く十七夜
友だちの飼い猫が死んだ。享年十八歳。旅行中のおばさんを昏睡ながら待ち、ちゃんと挨拶して逝ったのだと。
昔、祖父母の家の猫・マルも、マルを一番可愛がっていた従兄弟の帰郷を待って、従兄弟の手の甲をペロリと舐め、何処かへ消えたと聞いた。
私は、一般的な猫好きではないが、猫族に気の合う子が何匹かいる。
一匹は、今度亡くなった友だちのところのあんこ。あんこの毛はあんずジャム色。松谷みよ子さんの『ももちゃんとプー』に出て来る、ジャムという猫を思い出させる。
それから、埼玉在住のみゅう。あまんきみこさんの『みゅうのいるいえ』のみゅうと同じ名前だ。埼玉のみゅうは、夕方のひかりみたいな毛色をしている。本の中のみゅうはあめ色。
それからそれから、岩手の祖父母の家のハナ。ハナは青味がかった長毛のきれいな猫。この子は普段素っ気無いんだけど、何も言わなくても私達が帰る日を知っていて、ちゃんと挨拶しにくる賢い猫だ。
猫は不思議な生き物だと常々思っている。
話はそれたが、思うのは、猫の身の内にある、死に様の美学について。
ねがはくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃
西行は詠い、春に死んだ。
いかに生きるか。いかに死ぬか。それは等しく大切なことである気がするのだ。(すなみ・のりこ=出版社勤務)