動作知

朝起きて目玉焼きを作るとき、自分は目玉焼きの作り方を知らなかったとする。今日であれば、その問題はインターネットによる情報検索という行為によって解決される。目玉焼きを作るといったような、低難易度の動作の場合、この解決で問題はない。
それでは、もう少し難しい料理を作るとしたらどうだろう。例えば、パエリア。私はたまに作るのだが、これがどうにもうまくいかない。米が焦げてしまったり、逆に固くなってしまったりする。現在では、このように一般的に難易度の高い動作や作業をする場合、それは個人自身に蓄積された「ワザ」というべきものによってのみ成す事ができる。
それでは、その動作をプログラムとしてダウンロードし、身体で再現できるとしたらどうであろう?
例えば、攻殻機動隊という映像作品では、登場人物が宇宙軌道上の衛生からスナイパーライフルの操作方法を自分自身の身体にダウンロードする、という描写がある。私は、このシーンが好きだ。何故ならば、現在のインターネット社会と未来を結ぶ非常に分かりやすいメタファーであるからだ。電脳化、義体化という技術が必要となるが、夢がある。
それと同時に、怖さもある。人類が獲得してきた「動作知」とも呼ぶべき知識は、人類全体の間で共有されることとなる。「個」の差はなくなる。このことで、人類は滅びるかもしれないのだ。(taxpon=ITエンジニア)