底紅や加賀屋敷今ホテル街


底紅や加賀屋敷今ホテル街
極楽鳥花の株分けの話題から「今年の春は寒かった」という話になった。そういえば! 夏が暑すぎて長すぎて、忘れていた。
作務衣の似合う佐藤さんは以前、「年が押詰まってきましたね。一年あっという間ですね」との挨拶に、「年の瀬とかどうでもいい。そんな話する人の気が知れない」と答えていた。なんと、天晴れな。佐藤さんには、場つなぎの挨拶はしないようにしようと心に決めた。
しかしながら、一般的に.天気や気候の話が、お定まりの挨拶だってわかっていても、それでも口にしてしまう。大人の知恵なんだなぁ。

先日の吟行は、十月に入ったのに暑い日で、体感から「秋暑」という季語を使う人がいた。でも「秋暑は、初秋の季語でしょ?」って反論と、「でも実際暑かったから。吟行では感じたことを句にしてもいいのでは?」との賛同と、結論出ず。季語の本意を守るのか、体感を大事にするべきか。
とはいえ、秋の彼岸がくれば曼珠沙華がいっせいに咲き、実感はなくとも、十月となれば金木犀が香りはじめるのだ。私は何度も繰り返しその正確さに驚かされる。
「季節がおかしい」ってつい簡単に言ってしまうけれど、何が狂っていて、何が狂っていないのか、よく分からない。
そういえば週末、近くの神社の秋祭で、空いっぱいに花火があがっていた。これも季節外れだが……きれいだった。(すなみ・のりこ=出版社勤務)