胸中の疑問符鴉になりしこと

 ボルネオに行ってから、トイレのことが気になるようになった。ボルネオのトイレ事情は悪くはない。大きな水桶から水を掬って便器に流す。水圧で便器の奥の弁を開き流す仕組みになっている。トイレットペーパーは、日本から用意していった。芯の部分に紐を通したものを首からかけてトイレに入る。使用済みのペーパーはそばの屑篭に捨てる。ロングハウスという、床の高い長屋では、汚水を地面へ直接流していたかと思う。すぐ後ろは森であるし、建物の下には家畜がいるから餌になったかもしれない。
 現在は、東京、神奈川あたりの駅のトイレには、どこにもペーバーが常備されている。デパートの化粧室みたいにきれいなトイレも増えてきている。でも少し離れれば、静岡や名古屋あたりでもペーパーは常備されておらず(ペーパーホルダーがそもそもない)、東京近隣の駅トイレが稀有だという事実に気づく。 
 最寄り駅のトイレ(二つ個室がある手前の方)には、個室の屑入れに、弁当や菓子や飲物の殻が山になっている。寄るたびいつもある。そういえば、トイレで弁当を食べる大学生がいるって聞いたけれど、駅のトイレでもそうなのだろうか。街は清潔に明るくなっていくけれど…。やっぱりトイレで食事をするなんて、なんだか変だ。「白河の清き流れに住みかねてもとの濁りの田沼恋しき」。そんなこともあるかもなぁと思う秋の夜である。(すなみ・のりこ=出版社勤務)