コインロッカー開けて孤独を持ち帰る

女性にしか出来ないこと。女性専用車輌に乗ることもその一つ。私は、痴漢などの嫌な目にあったことがないので、切実感はなく、小ずるく利用している。他の車輌よりもすいているときには乗る、とか。
そこは、やっぱり何か奇妙な空間だと思う。女性しかいない細長い室。女性ばかりが、吊革に揺られている。ロングヘアやら、ぷりぷりしたお尻やら、汗ばんだ二の腕やらが、揺れてはあちこちからくっついてくる。
匂いも温度も、他の車輌と違う。以前、うつむいて泣いている女性もいたし、ひたすらに「ショックすぎる」とつぶやいている女性もいた。ひょっとすると、女性しかいない、その匂いや温度や空気に、生物として、違和を感じているのかもしれない。違和というか非現実というか。一つひとつがなんだか、ドラマティックに映るのだ。もしここに、男性が一人いたら、その人は何を感じるのだろう?

女性にしか出来ないこと。先日、友人が俳句で「身篭りし体」と詠っていた。よく見れば、鞄にマタニティマーク。俳句で友人の妊娠を知った。
五七五で伝えられることは限られているが、限られているからこそ、赤裸々でリアルな人生や日常を、さらりと程よく表現できたりもする。
女性にしか、というよりも、自分にしか出来ないことを、追及できたら。(すなみ・のりこ=出版社勤務)