マックフライポテトL夜食かな


マックフライポテトL夜食かな
九月、依然として、馬鹿馬鹿しいほどに、非現実的に、アツい!「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」 風によって秋の到来がわかる、と藤原敏行さんは言った。風は変わった。秋は確かに来ているのだろう。でも、秋が来て、夏が去ろうとしている、その一抹の淋しさと、清々しさが伴わない。私の心身はからっぽになれずに、惑っている。
月曜日から金曜日へ向い、乱れていく爛れていく。土日にうまくOFFできなければ、乱爛濫(らんらんらん)と次週へつづく。そうして「千と千尋」のカオナシを思う。どんどん飲み込んでぶくぶくに大きくなって、それでも満たされない虚空を思う。苦団子を食べさせられて、全てを吐き出し尽くしたカオナシの、清々しい脱力を思う。
週末、俳句の研修会がある。テーマは「無季」で、先日、無季句三句を投句したのであるが…。季語なく作ったら、私の五七五は、とたんに俳句じゃなくなってしまった。見目悪くても、ちょいと季語を羽織れば俳句に見えていた、という事実。馬子にも衣装。私の五七五は今、季語という衣装を剥がれて、素っ裸で不安を抱えている。
季語なき世界で突きつけられたのは、私はいったい、何を詠みたいのか。そこに詩はあるのか。五七五と季語という「かたち」に依存していたことを知った。
無くしてはじめて見えてくるものがある。(すなみ・のりこ=出版社勤務)