「書くこと」の快楽

 スポーツも音楽も勉強も不得意で、そのうえ人見知りで友だちもほとんどいなかった小学生の私のとって、一番好きだったことが担任の先生との日記だった。どんなことにも丁寧に赤ペンでコメントをもらえることがうれしくて、私は日々、今日はなにを書こうかと「ネタ」探しにいそしんでいた。もしあの先生がいなかったら、私はきっと「書くこと」の快楽を知らなかったと思う。
 軽い気持ちで始めたこのコラムだが、毎週560字程度で何かを伝えるというのはたやすいことではない。およそ3分程度で読めてしまうこの560字という長さ。何かを伝えようとするには短すぎるのではないかと思うが、決してそうではない。その力を圧倒的に感じるのが毎週月曜(まさに今日!)に東京新聞特報面の「本音のコラム」で連載している宮子あずささんのコラムである。自らの小さなエピソードから始まり、主張しているわけではないのになにか大きなことを私に伝えている。たった560字でも人を元気づけたり、楽しませたり、もしかしたら傷つけることだってできる、そう思わせるのが彼女の書く「本音のコラム」である。私はこのコラムを始めるきっかけとなった宮子あずささん(会ったことはないけれど)に感謝している。と同時に「書くこと」の快楽を教えてくれた小学校のときの担任、積山先生には頭があがらない。 (J=大学院博士課程)