上海

 中国・上海へ行ってきた。
 今回で4度目となる上海訪問の目的はもちろん上海世博(上海万博)なのだったのだが、最後に行った2年前とは大きくその姿を変えていた。外資系企業の看板が立ち並び、以前よりも「都市」として整備された街並みはひどく人工的であった。オフィスビル街の一角にあり、衛生状況は決していいものとはいえないが、美味しい小吃を低価格で出していた屋台街は全て舗装され(上海の人の言葉を借りれば「去掉了/取り払ったよ!」)、有名店だけがショッピングビルのグルメ・モールに移転し、以前は交通の便が悪かった豫園や新天地など観光地をつなぐ地下鉄10号線ができていた。
 訪れるたびに違う姿で魅せる上海の「発展」は、この国家だからこそ為せることであることはわかっているのだが、わが国以上に資本主義の「美しさ」を感じることにやはり違和感をおぼえてしまう。かつて、あるシンポジウムで大手通信社の外報部長が、国民性という観点からみると中国と日本はそれぞれ間違った歴史の選択をしてしまったと述べていた。その選択とは中国が共産主義を選択し、日本が資本主義を選択したことであると。短絡的な指摘で議論の余地はあると思うが、いい意味でも悪い意味でもエネルギーにあふれる上海から「静かな」日本に戻るたびに、私はいつもその指摘を思い出してしまう。(J=大学院博士課程)