「セフレ」

 来年アメリカで発表予定の論文の筆がなかなか進まない。あと数週間で提出しなければならないのに、気持ちだけが焦っている。
 論文のテーマは快楽、とくに大衆文化と女性の快楽に関するものなのだが、最近ある女性の方と性的な快楽について話す機会があった。彼女は道行く見知らぬ人であろうとも、この男に一度でもいいから抱かれたいと時に思うのだそうだ。彼女の言葉を借りれば「子宮がうずく」という。そして、彼女には現在、彼氏以外で定期的にセックスだけの関係を結ぶ相手、すなわち「セフレ」がいる。
 一般的に(この言い方ほど便利でいい加減な言い回しはないが)、「セフレ」はあまり好意的に受け入れられている関係性ではなく、ごく少数の「ふしだらな輩」のものとして捉えられる場合がほとんどである。しかしながら、「セフレ」は決して特異な関係ではなく、多少の違いの差はあれど、英語圏では「fuck body」、台湾では「炮友」という言葉で表現される関係性があり、決して日本だけの現象ではないのである。
 生きていくために複雑な人間関係を要求する現代社会において、「セフレ」は単に非難される関係性ではない。むしろ快楽の合理化を担う一つの関係性としてもっと評価すべきだろう。少なくとも形骸化した「結婚」という制度よりはよほど合理的だと私は考えるのである。(J=大学院博士課程)